208574 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

あいすまん

あいすまん

沖国大文芸部のこと

沖縄国際大学文芸部のこと
みやじ。

第二十二回山之口貘賞受賞以降、私は大学でサークル活動に没頭してきました。入学時に立ち上げた文芸部を何とか軌道に乗せようと、我武者羅の三年間でした。その間五十人近くが入部しながら、常時十人前後で活動するという目まぐるしい顔ぶれの変化がありました。元は音楽誌『Amp!』を発行する文学色の殆どない部だったのを、無理矢理に近い形で方向転換したことにより、部員の多くが辞めてしまうなど、私の指導力不足を露呈しながらも二〇〇〇年八月にはフリーペーパー「偽パンダつうしん」を創刊してのちの文芸誌発行に備えました。そして十一月にはそれまでの二年間の活動の集成として『沖国大文学』を創刊することができました。『沖国大文学』創刊号はその年の沖縄タイムス十二月二十八日(文化欄)の「詩時評12月」において「沖縄の文芸潮流に新たな予兆」と題し、川満信一さんが大きく紙幅を割いて祝してくださいました。創刊号発行を期に迷走状態から脱け出した部は、二〇〇一年二月にインターネット上での交流を基に東京で開かれた、手作りの「全国大学文芸部総会」に部員七名で参加するなど、部活動らしい団体活動ができるようになりました。四月に部長を伊波泰志に引き継いでからは、事務作業の役割分担や月例合評会の開催など、活動は軌道に乗り始め、多くの新入部員が中心となって二〇〇一年九月には『沖国大文学』第二号が発行されました。創刊号の倍に膨れ上がった頁数に、再び詩時評で取り上げてくださった川満信一さんは「くそもみそも盛り沢山」と表現しながら、短編「或る夜の出来事」を書いた砂河千笑の筆力に「近いうちにいい仕事ができる」と評して下さいました。他にもその前月の詩時評で創刊号のケモリンの詩「KILL THE GOD」に「詩の思わぬ予見性」を見出してくださったほか、大野隆之沖国大助教授は沖縄タイムス二〇〇一年年末回顧(小説)で、琉球新報短編小説賞を受賞したてふてふPさんと並べ「『沖国大文学』の若い同人たち」に希望を見出し、同時に「幼い頃から本土発のメディアに拘束されており、描くべき自己の問題が見えていない」との指摘もくださいました。文芸部には他にも、二代目部長を務めた伊波泰志が天荒俳句会でしのぎを削っているほか、個人でミニコミを発表して独自の表現を模索するトーマ・ヒロコや、文語体で有季定型の古典俳句を詠む松永朋哉など、個性的な人材がひしめいています。私が立ち上げながら持て余し、三年間格闘してきた部はようやく軌道に乗り、私も人間関係の楽しさと辛さ、両方学ぶことができました。まだ未熟で発展途上の部ですが、少なくとも私はこの部に誇りを持てるようになりました。この体験を自分の詩の世界にも反映していくことが、部を動かしていく上で支えてくださった多くの方々への、感謝の印になると思っています。

 『うらそえ文芸』第7号(2002.5)掲載


© Rakuten Group, Inc.